「情報・メッセージ」のページより転載
『明日からトライ! ダンスの授業』全国ダンス・表現運動授業研究会編
紹介 今村 修(東海大学体育学部)
周知のように、学習指導要領の改訂を受けて、平成24年度から中学校1・2年生でダンスの必修化が実施される。これまで、ダンスの指導には無縁であった保健体育教師が、これを機に、「ダンスを教えなければならなくなったl」という事象も全国で見られることだろう。そうした際に、本書は最適かも知れない。何よりこの本は構成が明解で、かつ巧みである。大きくは3部に分かれており、第I部「入門編」(全2章)、第Ⅱ部「応用編」(全5章)、第Ⅲ部「理論編」(全1章)となっている。
第I部は、まさに「入門編」の名に相応しく、「なんだ、こうすれば良いのかあ」「私にもダンスの指導ができそうだ」と、実感できるような内容となっている。さらにこの第1章は、丸ごとDVDに収録・可視化されており、初心者にとってはこれほど有り難いことはない。第Ⅱ部では主に、創作ダンス・フォークダンス。現代的なリズムのダンス、といったように、学習指導要領に則ったカテゴリーで各授業内容が紹介されている。しかもそれらは皆、学習指導案の形式で記述されているため、大変に分かりやすく使い勝手の良いものとなっている。第Ⅲ部は理論編として、ダンスとは何かというところから説き起こし、ダンス学習の目標・内容・方法。評価論などが、学習指導要領と関わりを持たせながら、平易に解説されている。
「はじめに」でも触れられているが、「長年にわたり仮説検証的な実践研究を積み重ね、わかりやすく、多くの先生が取り組みやすい授業づくりをめざしてきた」だけのことはある。ややもすれば、生徒のみならず教える側の教師にもダンスヘの照れくささがある中で、「ダンスは、こんなにも楽しく、教育的価値も高いのだ」という、編者らの熱い思いがどのページからも伝わってくる。その多様な思いの丈を、手際よく纏められた出版社の編集部にも、大いなる賛辞を贈りたい。
本書を推薦します
松本 千代榮
ダンス男女必修の時代を迎えました。その学習指導の手引きとして本書を推薦します。
顧みて,昭和22年,学校体育要綱(文部省)は「ダンス」の名称を採り,作品創作・作品鑑賞・表現技術を内容とし,民踊・参考作品を指導上の注意点に付記して,創作と伝承を踏まえた学校ダンスを出発させました。教材を教える教育から,自己表現を引き出す教育への拡充です。
昭和30年には,竹之下休蔵先生を中心として3年間の授業研究が行われ,一つの方向が示されました。
これを受けた全国の有志は,ダンスの「授業研究」に着目し,月例研究会と年1回の合宿研究を重ねて,創作学習の計画と指導の要点を明らかにしました。ダンスの「問題解決学習」の実証です。
長年積み重ねた「授業研究の成果」として,ここに掲げられた事例を手がかりとし,一人ひとりの指導者がダンスを見つめ,学習者と共に,個と表現の喜びを更に新たに拓かれることを切望しています。
(お茶の水女子大学名誉教授)